硝子体内注射(抗VEGF薬治療)

硝子体注射とは

硝子体は眼球内部にある透明なゼリー状の組織です。硝子体注射では、薬剤を硝子体に直接注入します。抗VEGF薬を用いた治療が加齢性黄斑変性に行われ、新生血管の消失の効果が得られることから、この治療を行っている施設も増えてきています。
他にも、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、近視性脈絡膜新生血管症などでも、新生血管の消失効果が認められることがわかってきて、治療対象の疾患が増えています。こうした疾患は、血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor=VEGF)が漏れ出すことで、新生血管の増殖や黄斑浮腫などを起こしています。抗VEGF薬は、VEGFの働きを抑える薬剤で、硝子体注射によって直接眼球内に直接届けることで進行抑制が期待できます。

硝子体注射の内容

一般的な注射針に比べるとかなり細い針を使い、黒目から数㎜という針を刺しても問題のない白目の決まった場所に注射します。その後薬剤を注入して終了ですので、時間もかかりません。なお、注射によって微細な穴ができますが、すぐに塞がって問題を起こすこともありません。

抗VEGF薬について

もろくて増殖しやすい新生血管を消失させる効果が認められた薬剤です。この薬剤を硝子体注射で目の中に直接注入する治療は、2008年に保険適用されています。
硝子体注射が始まった当初は大腸がんの方の点滴注射に用いられるアバスチンという薬剤を使っていましたが、現在は眼内治療専用に開発された抗VEGF薬のルセンティスやアイリーア、ベオビュといった治療薬が登場し、当院でも使用しています。
抗VEGF薬による硝子体注射は、患者様の心身への負担が少ない治療法であり、高い効果が期待できます。ただし、進行度だけでなく、薬との親和性なども効果の出方に関わってきますので、同じ疾患で進行度が変わらない場合でも効果の出方には個人差があります。
注射頻度や回数は、使用する薬剤の種類、疾患の状態や症状などによって変わりますので、効果をしっかり評価した上で治療を進めることが重要です。

ご注意

硝子体注射の治療を受ける際には、治療当日の前後数日間、抗菌薬の点眼が必要になります。ご自宅で忘れずにしっかり行ってください。

治療対象となる疾患

加齢黄斑変性症

加齢が原因で発症する疾患です。太陽光の中で、紫外線や青い光(blue light)が発症に影響していると報告されています。欧米に多い疾患ですが、日本でも50歳以上の方の80人に1人が発症しているとされているため、珍しい病気ではありません。見る機能で重要な役割を果たす黄斑に障害が起こる疾患で、日常生活に大きな支障を生じる可能性がある病気です。新生血管が増殖して出血や血液成分の漏出を起こし、視野の中心が暗く見える、注視するものがゆがむといった症状を起こします。文字の細部が認識できなくなり、読めなくなることもあります。

加齢黄斑変性について

糖尿病黄斑浮腫

糖尿病網膜症によって生じます。糖尿病網膜症の進行度に関わらず発症する可能性があり、糖尿病の方は症状がなくても半年に1度程度の定期的な眼科検診を受け手、早期発見と適切な治療を受けることが重要です。
注視したものの細部を見分けることが可能な黄斑がむくんで膨れ、注視するものがゆがんで見えるなどの症状を起こします。文字の細部が認識できなくなり、読めなくなることもあります。

糖尿病網膜症について

網膜静脈閉塞症

網膜は毛細血管に富んだ組織です。その網膜の静脈が詰まる閉塞を起こし、その先に血液がうっ滞して、網膜出血や網膜浮腫を引き起こします。高血圧がある方や高齢の方の発症が多くなっています。出血が起こる場所によって症状が異なりますが、視力の大幅な低下をもたらすこともあります。進行によって血管新生緑内障、硝子体出血などを起こし、失明につながる可能性もあります。

網膜静脈閉塞症について

強度近視による脈絡膜新生血管

強度近視では眼軸長が長くなって網膜の後ろにある脈絡膜が引き延ばされて障害されることがあります。それによって本来は存在しない新生血管が増殖して出血や血液成分の漏出を起こし、網膜の腫れや水分がたまることで、ものがゆがんで見える、視野が欠けるなどを生じます。

硝子体注射の流れ

1事前準備

数日前から抗菌薬の点眼を行っていただきます。また、目に細菌などの病原体が入らないよう、できるだけ触れないよう心がけ、タオルなども清潔で乾いた部分を使うようにします。

2事前準備

処置室に入っていただき、点眼麻酔や目の消毒を行います。消毒薬は目にしみる場合が多いです。点眼麻酔によって、注射による痛みもほとんどありません。

3硝子体注射

硝子体注射自体は数分程度で終了します。

4翌日診察

硝子体注射の翌日に受診して、状態を確認します。
硝子体注射は一定の期間後に数回繰り返す必要がある場合が多くなっています。適切な頻度や回数は患者様によって大きく異なります。
なお、硝子体注射では十分な効果を得られない場合には、レーザー治療や外科的手術などを検討することもあります。

5術後の点眼

翌日以降も指示された期間内は抗菌薬の点眼を行っていただきます。

6定期検診

定期的に受診して検査を受け、状態に応じた治療スケジュールに合わせた治療を行います。
再発することもありますので、定期検診は不可欠です。

硝子体注射を受ける際のご注意

硝子体注射は患者様の身体への負担が少なく、日常生活への制限も比較的少ない治療法です。ただし、眼内処置ですので、感染症リスクがゼロではありません。
適切な制限を守っていただくことで、こうしたリスクを低減させることができます。
硝子体注射は、受ける前後数日間、抗菌薬の点眼が必要で、治療前後で注意点について詳しくご説明しています。なお、制限には個人差が生じることもありますので、医師の指示をしっかり守ってお過ごしください。

入浴

制限はありません。

洗髪・洗顔

注射当日のみ、洗髪・洗顔をやめて頂いております。

メイク

当日はメイク不可です。注射の翌日には、目の周囲を避けたファンデーション、眉、口紅のメイクは可能です。

TV・スマートフォン・パソコン・読書

当日から可能ですが、目が疲れないよう短時間にとどめ、こまめに休養してください。

飲酒

制限はありません

仕事

制限はありません

運動

翌日(もしくは翌々日)の診察以降は、制限はありません。プールでの水泳や海水浴、温泉の入浴などは、抗生剤点眼中はお避け下さい。

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